東京五輪を自己保身の博打にした安倍首相

Introduction「首相は賭けに出た──」

森喜朗・元首相は ”サメの脳味噌(サメ脳)” と揶揄される程、暗愚なことで有名でした。しかし、その森氏をして驚かせたのが安倍首相の「オリンピック1年延期」の表明です。

森喜朗氏は一体何に驚き、そして、新型コロナウイルス終息の目途が全く立たない中、安倍首相は一体全体何を考えているのでしょうか?

”サメ脳” 森喜朗ですら2年延期路線だった

森喜朗・元首相にとって、東京オリンピックこそが人生を飾る ”最後のレガシー” となります。政界を既に引退しているのも関わらず「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長」として、誰よりもオリンピック開催に情熱と執念を燃やしていたのは皆が知るところです。

森氏にとっては、自分の目の黒いうちにオリンピックが開催できなければ「死んでも死にきれない」のであり、オリンピックが近づくにつれ体が痩せてゆくと共に鬼気迫る形相となり、それが2月21日のオリンピック公式ウエア発表会での「私はマスクをしないで頑張る!」発言へと繋がり、世間のひんしゅくを買いました。

よって、オリンピックの延期や中止に最も反対するのが森氏であるはずなのですが、そんな森氏ですら、新型コロナウイルスのパンデミックによるオリンピックの「2年延期」はやむを得ないと考えていたようです。このことは ”サメ脳” 森氏にしては極めて妥当な判断と思われますが、当の安倍首相は全くそうではありませんでした。

実は、3月24日の「安倍首相 & IOCバッハ会長」の電話会談の30分前、首相官邸に招かれていたのが、何を隠そう森氏だったわけです。その際、森氏は安倍首相から「オリンピックの1年程度の延期」を告げられました。そして、驚いた森氏は「2年延期という意見もある」「1年後に開催不可能なら、政治的に大変困難な状況になる」と2年延期を進言しましたが、安倍首相はこれを跳ねつけました。

つまり、安倍首相は ”首相任期中のオリンピック開催” を絶対に手放さなかったということ。ちなみにバッハ会長の任期も来年の9月までです。実は両者の思惑は一致していたのです。

そして、そこで出たのが冒頭に紹介した「首相は賭けに出た」です。
首相官邸での会談後、森氏が側近に漏らした言葉です。

安倍首相の戦略は変更を迫られるのか?

▲ 関連記事

このニュースサイトでは、3月16日に行われたG7首脳らによるテレビ電話会議を受け、安倍首相が「(オリンピックを)完全な形で実施することの確約を、G7首脳から得た」と発言した時点で、オリンピックは延期されるものと確信しました。そして、その後に展開されるであろう安倍首相の戦略について、次のように予測しました(▲ 関連記事)

①3月16日にG7首脳らと五輪延期を確約
②4月末 または 5月下旬に五輪延期が決定
③6月に「非常事態」と「衆議院解散」を宣言

④7月に衆院選(消費税減税を公約に自民党圧勝)

当初は「4月末 または 5月下旬」にオリンピックの延期が正式決定されるものと想定していましたが、事態は急速に進行しました。しかし、基本的な流れは変わらず、7月には「衆院選」が行われるものと予想しています。これはつまり、「東京都知事選」と同日選となる可能性が極めて高いということです。

そうなると、当然のこととして、今後の東京都のコロナウイルス感染状況が気になるところですが──

3/31~4/3 東京に最悪の事態が出現する?

東京都の感染拡大について、極めて重要な記事を紹介します。

グレートジャーニー合同会社 代表である安川新一郎氏による記事『新型コロナウィルスについて⑥:4月第2週の首都封鎖 – ロックダウンへのカウントダウン-』は示唆に富んでいます。

安川新一郎氏のプロフィール

オリンピックの開催をめぐりIOCバッハ会長と安倍首相との電話会談が行われ、安倍首相の口から正式に延期が伝えられたのは、3月24日のことでした。

東京都のコロナウイルス感染者は翌25日に41名、26日には46名、そして27日も40名を超えるなど、あたかも延期発表を起点としてその数が急速に上昇する傾向が見られ、小池都知事は「感染爆発 重大局面」であるとして週末の外出自粛を呼びかける記者会見を開いています。

これをもって、今までオリンピック開催のために隠蔽されていたデータが、延期を契機に一気に明らかにされたと見る向きも多数存在します。
確かに、そのような政治的思惑は確かにあったと考えられ、PCR検査などはオリンピックを意識し意図的に検査数を抑えられていたことは否定できません。

しかし、安川氏の記事では東京都の急激な感染拡大について、下記のような興味深い見方を示しています。

①2/27 の休校要請後、かなりの数の家族が、感染すると思わず自粛疲れの日本を離れ、欧米へと海外旅行に行った。

②3/11 頃からイタリア、アメリカ、フランスなど欧米で、一気に感染者と死亡者が確認されるようになった。

③3/11 頃から日本人旅行者が、欧米から続々と帰国してきた。

④その後、これらの旅行者たちは、日本人のメンタリティーとして「この時期に海外行っていたこと、陽性かもしれないこと」は隠して日常生活に戻った。

⑤3/11 からちょうど2週間後の 3/25、東京都では感染者が激増した。

つまり、東京都の感染爆発とオリンピックの延期発表のタイミングが見事に重なっており、安川氏の記事から分かるのは当面の間、東京では感染爆発状態が続くであろうということ。

安川氏はこれらを日本人の ”緩んだ” 行動の結果であると評し、次のように断言しています。

日本人の「少し緩んだ」行動の結果は、来週3/31〜4/3あたりに最悪の結果として現れます

緊急事態宣言は発令されるのか?

安川氏の予測の通りに事態が進行すれば、4月の第1週末の4月3日頃、あるいは第2週初めの4月6日頃には「緊急事態宣言」が発令されるかもしれません。その場合、4月中の外出は厳しく制限されることが予想され、特に東京都の場合は状況次第では小池都知事の言う「都市封鎖」にまで発展するかもしれません。政府としては、4月を緊急事態期間とし、5月中にはある程度の感染の収束を期待することになるでしょう。

そうなった場合、安倍首相の戦略はどのような形になるのか?
修正後の戦略を以下に記します(7月の衆院選は変わりません)

①3月16日にG7首脳らと五輪延期を確約
4月末 または 5月下旬に五輪延期が決定

 3月24日に五輪延期が決定
6月に「非常事態」と「衆議院解散」を宣言

 4月上旬に「緊急事態宣言」が発令
 5月中に感染が収束へ
 6月に「衆議院解散」を宣言

④7月に衆院選&都知事選(消費税減税を公約に自民党圧勝)

結局は安倍首相による五輪の政治利用

元通産官僚で、現在は政治経済評論家として活躍される古賀茂明氏は、安倍首相の戦略について簡潔にしてユニークな予想を披露しております。

古賀氏の予想は同じように衆院選に言及しつつも、それがオリンピックが予定通り開催されたとした1年後である点です。しかも、自民党総裁4選といった安倍首相の図々しさをも見据えた大胆予想で、首相に居座るのか院政を敷くのか、どちらもフリーハンドであることを文面化している点が分かり易いと言えます。

つまり、筆者の予想であっても古賀氏の予想であっても安倍首相にとってのオリンピックとは自己保身のための「政治博打」、あるいは「政治利用」でしかないということ。

3月27日の参院予算委員会で安倍首相は、立憲民主党の石橋通宏議員に「1年程度の延期を提案した理由」について質問され、「専門家の助言はいただいていない」と明言しました。これは安倍首相に言わせれば「政治判断」ということになるようですが、さて、この状況から鑑みると政治判断というよりはむしろ「博打」に見えてしまうのは気のせいでしょうか?

また、2月27日に安倍首相によって発信された「休校要請」についても、これと同様、専門家の意見に即したものではなく、安倍首相の ”政治判断” であったことが分かっています。

安倍首相はここ最近、少なくとも2度の ”大博打” を打っている。

私たち国民にしてみれば、安倍首相の博打に付き合わされるのはご免ですし、利用されるのもたまりません。これはコロナ対策でも言えることですが、安倍首相がまともに国家のハンドリングしたためしなど一度もありません。

安倍首相は常に自己保身に汲々とし、自己栄達にしか関心を示そうとしないのです。

【ニューヨーク共同】米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は26日、新型コロナウイルスの日本での感染状況について「厳しい外出制限をしていないのに、イタリアやニューヨークのようなひどい状況を回避している」と指摘、世界中の疫学者は理由が分からず「当惑している」と伝えた。

日本が医療崩壊を避けるため、意図的に検査を制限しているとの見方を紹介。米コロンビア大の専門家は、日本のやり方は「ばくち」であり「事態が水面下で悪化し、手遅れになるまで気付かない恐れがある」と警鐘を鳴らした。
~2020.3.27 東京新聞『日本の状況「世界が当惑」 感染増を回避、理由分からず』

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