Newsweek 2019.11.5 を読み解く ~山本太郎とは何者か!?

Introduction:『Newsweek 日本語版 2019.11.5号』は読みごたえ「大なり」ですね。

理由はもちろん、「れいわ新選組」代表・山本太郎氏の特集です。

特に、10ページにわたる映画監督・森達也氏による取材記事は圧巻です。

森監督は自らの政治的立場をあえて告白した上で、山本太郎氏の本質を炙り出すことに挑戦しています!

一人で構想し一人で決定する「一人称単数」政治家

「彼は本気です。最初に会ったときの目が忘れられない。国会で質問する際も必ず現場に行って当事者の話を聞き、きちんと原稿を作ってストップウォッチで秒数も計って何度もシミュレーションしている。他の議員たちとはまったく質が違います」
――森ゆうこ国民民主党参院議員

映画監督、森達也氏はかつて「すごいオーラを発しながら、食い入るように見つめる青年」の存在に気がついたことがあると言います。

東日本大震災が発生した当時、政権与党の予算委員会・筆頭幹事としてスピーチの壇上に立った森氏を凝視していたこの青年こそが、政党「れいわ新選組」代表の山本太郎だったと言うのです。

では、森氏にとって、現在の山本太郎はどのような政治家に映るのか?
キーワードは「一人称単数」です。

これは組織として完全な自民党に対する、痛烈なアンチテーゼにもなります。
つまり、「個」がほとんど機能していない自民党に対し、山本太郎は物事をひとりで構想・決定し、同様に「れいわ新選組」の候補者たちも組織に埋没しない人々の集まりであることを指摘しています。

そのような政党が国政に影響を与えうる存在になるばらば、日本の政治風土は大きく変わると考えられますが、まだ結論は出ていません。

先般の参院選挙において、山本太郎は比例区の候補者として最多の99万もの票を獲得しました。そして、その個人票は「れいわ新選組」とい政党全体の得票の4割以上を占めています。

つまり、政党への支持ではなく、山本太郎への支持というのが「れいわ新選組」の現状であることを、森達也氏は冷静に指摘しています。
と同時に、森氏はこれまでの新党ブームとは ”何かが違う” 直感を感じ取っているようです。

◆ 関連記事 ◆
 「『GQ JAPAN』DECEMBER 12 を読み解く ~外国人に山本太郎はどう映る?」

既存の政治システムを止める覚悟はあるか?

「一人称単数」ということであれば、参院選にも出馬した安冨歩・東京大学教授も同じ考えを持っています。

安冨氏は次の衆院選に出馬することは現時点では ”微妙” としながらも、「ならばブレーンとして参画すれば」との森氏の問いに、
「太郎さんはブレーンの必要性は感じていないと思いますよ」と明言します。
安冨氏が提案し、山本太郎がそれについて考え、最後は山本太郎が一人で決定する、といった関係性のようです。

実は、安冨氏はここで大きなポイントとなる発言をしています。

それはこういうことです。
山本太郎が「考える」政治家であるとするならば、現在の安倍政権と安倍政権を支える者たちは「何も考えていなくて」、判断の主体は自分たちではなく ”官僚を含むシステム” であるということです。

主体性のある者は一人もおらず、言われた通りのことしかしていない。これが「日本の政治」なのです。

安冨氏は指摘します。
つまり、この既存の「日本の政治」システムに適合しようとしなかった「民主党政権」は潰されたと。政権交代を選択したにも関わらず、いざこのシステムが止まりかけたら多くの人は恐れをなした。――”システムを止める決意をしていなかった”

民主党政権は決して ”悪夢” ではなかったはず

安冨氏はこれ以上の深掘りはしませんでしたが、これは大きな「発見」あるいは「再確認」ではないかと筆者は思い至りました。

安倍首相は事あるごとに ”悪夢の民主党政権” を吹聴しますが、無論、民主党政権は多くの問題を内包していたにせよ、この政権がワークしなかったのは、結局のところ日本国民に覚悟がなかったからではないでしょうか?

つまり、サミュエル・スマイルズの名著、『自助論』の有名な冒頭の下りは洋の東西を問わずそのまま当てはまることを、上記の ” 日本国民に覚悟がなかったから ” といったことからしても、見事に証明されているわけです。

政治とは、国民の考えや行動の反映にすぎない。どんなに高い理想を掲げても国民がそれについていけなければ、政治は国民のレベルにまで引き下げられる。逆に、国民が優秀であれば、いくらひどい政治でもいつしか国民のレベルにまで引き上げられる。つまり、国民全体の質がその国の政治の質を決定するのだ。これは、水が低きに流れるのと同じくらいの当然の論理である。
~サミュエル・スマイルズ『自助論』(三笠書房)~

山本太郎が首相になれば、間違いなく既存の「日本の政治」システムは止まると安冨氏は言います。
彼の言が正ならば、その時になって日本国民は本当の真価を問われることになるかもしれません。そして、それが日本の政治を変える、最後のチャンスとなるかもしれないのです。

山本太郎を逃したら、次は誰もいない!

「死後のチャンス」ということであれば、日本の政治を変える最後のチャンスと考えて山本太郎を支援している一人が、女優の木内みどり氏です。

木内氏が言うには、山本太郎とは「大きな集団に属したり多くの人と一緒に何かをやったりするのが苦手」なタイプ。それでも、困っている人や助けを求めている人を見過ごせないタイプでもあるといいます。

そんな山本太郎の勉強量は凄まじく、皆疲れ切って寝ているときに、自分が最も疲れているにも関わらず、分厚い経済の本を読んで勉強している。

そういった感受性の感度は目を見張るものがあり、でも最後は自分で決めて一人でやってしまうような側面がある。
つまり自分の直感で見めているようでもあるのです。

ここでも「一人称単数」といったキーワードは有効なのですが、しかし、政治は一人ではできません。
だからこそ、「彼を支えるのだ」と、木内氏はそう言います。

首相になることは「手段」に過ぎない


様々な角度からの取材を通して、映画監督・森達也氏は一つの核心のようなものを得ます。

それは、今や日本にとって山本太郎は ”重要なカード” であるということ。
しかしながら、当の山本本人にしてみればその意識は希薄で、困っている人を助け、弱い人に手を差し伸べる。そういったことが最終目的であって、そのために既存の政治システムを壊すのだということです。

よって、山本太郎にとって首相の座は、目的達成のための手段でしかないことになります。

森氏は自分が思うことは綺麗事かもしれないことを認めつつ、しかし、「綺麗事は重要だ」とも言います。一昔前なら女性や障碍者に権利を与えることも綺麗事であったし、さらに時代を遡れば身分制度や差別構造は社会の前提条件でもありました。

そんな中で綺麗事を叫べは、人々に嘲笑されるのが落ちでしょう。
しかし、山本太郎ならば、嘲笑されても行動することを止めないに違いない。
それが山本太郎という政治家なのです。

――「胸を張って綺麗事を叫ぶ。その実現が社会の成熟なのだ。」
~森達也(映画監督)~

『Newsweek 日本語版 2019.11.5号』では、その他にもノンフィクションライター石戸諭氏によるインタービュー記事なども掲載されており、山本太郎氏の政治家としての輪郭がこれで明確になったのではないでしょうか。

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